不良な立位姿勢で起立練習を繰り返すことの是非

第1回目のテーマは、「不良な立位姿勢で起立練習を繰り返すことの是非」につ

いてです。

 

患者さん(Aさん)は、内部障害による長期間の廃用症候群が主体で、中枢神経障害や整形外科疾患の既往はありません。

離床とADL向上が目標です。

後輩のFくんは、Aさんのバイタルを確認して離床、車椅子に移乗させて、リハビリ室に案内しました。

リハビリ室では、平行棒で起立練習を数回行い、初回の理学療法を終了しました。

さて、フィードバックです。

私 『Aさん、やってみてどうだった?』

F  『離床させて、平行棒で起立練習をしました。』

私 『今後の方向性と、そのための課題、問題点は何かな?』

F  『えっと、平行棒歩行をしていきたいです。』

私 『うん。そのために、Aさんに何か問題となる症状はあるかな?』

F  『筋力低下、ですかね。』

私 『じゃあ、それをどうやって解決しよっか。』

F  『起立練習をやっていったらいいのかなって。』

私 『それで、今日も起立練習を繰り返してたんだね?』

F  『はい。』

私 『繰り返してる中で、変化はあった?』

F  『いえ…』

私 『筋力低下ということは、筋損傷や筋のボリュームなんかの筋自体の問題と、運動神経の発火頻度や参加する運動単位数という神経・筋の要因があるよね。
   筋のボリュームはすぐには変化しないけど、神経・筋の要因はトレーニングによる繰り返し運動によっても反応が見込まれるから、トレーニング中にも変化があってもいい。
   だけど、Aさんは今日の起立練習の繰り返しでは、変化しなかった。』

F  『・・・はい。』

私 『ということは、筋の出力に影響する他の影響、つまり筋の粘弾性や、非神経原性筋収縮、姿勢アライメントなどの影響がある可能性がある。

私 『粘弾性は全体的な伸張性の低下、非神経原性筋収縮局所的な伸張性の低下を診る必要がある。
   姿勢アライメントの影響ということは、坐位姿勢や立位姿勢、または起立動作の分析が必要になる。
   少なくとも、今日の理学療法において、後者は診てたと思うけど、どうだった?』

F  『立位で、重心が後方になっていました。』

私 『ちょっと実演してみて』

Fくんによる模倣では、骨盤を後方に引いた立位姿勢で、平行棒を引っ張っていないと立っていられないものでした。

足関節の背屈制限が顕著な症例によく見られる現象です。

私 『そのアライメントは、何が原因かな?』

F  『足関節の背屈制限です。』

私 『そうだね。じゃあその立位姿勢で起立練習を繰り返すことで、その背屈制限や、立位姿勢、それからFくんが言った「平行棒歩行」の獲得には近づくかな?』

F  『あんまり良くないと思います。』

私 『じゃあ、どうしよっか。』

F  『まず、足関節背屈制限に対してアプローチしようと思います。』

私 『うん。じゃあがんばって考えてみてね。』

はい、今日のフィードバックは以上でした。

内容的にはまだまだ浅いですが、初めのうちはこんな感じでいいかなと思っています。

さて、次回は、Fくんが、Aさんに足関節のアプローチを行うのですが、

そこで、フィードバックのテーマになったのは、『最適なROM治療について考える』です。