姿勢を保持する筋活動の賦活

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静的姿勢制御練習は、姿勢を保持する筋活動の獲得と、BOS固定での重心移動なし課題での姿勢制御練習で構成されます。


姿勢を保持する筋活動は、抗重力伸展活動という曖昧な表現を避け、解剖学的・運動学的に筋の活動の役割を理解しましょう。

 

重力に抗して肢体を動かす際は短縮する側の筋の求心性収縮が主たる活動であり、従重力的に肢体が動くときは、短縮する筋は活動せず、伸張する筋の遠心性制御が主たる活動になります。


体幹・骨盤を前傾位から鉛直位に起こすときの主たる筋活動は、最長筋、多裂筋、および大殿筋の求心性収縮(上図①)。


鉛直位から体幹・骨盤を後傾するときの主たる筋活動は、胸郭前面筋、腹直筋、外腹斜筋、および腸骨筋の遠心性活動により制御されます(上図②)。

 

鉛直位から体幹・骨盤を前傾するときの主たる筋活動は、腸肋筋、および大殿筋の遠心性活動により制御されます(上図③)。

 

体幹・骨盤を後傾位から鉛直位に起こすときの主たる筋活動は、腹直筋、腹斜筋、および腸骨筋の求心性収縮(上図④)。

長期臥床により最長筋の筋出力が低下している症例には、坐位で上肢挙上運動などを行うと良い。上肢挙上運動は棒などを使っても良い(左)。

 

体幹の前倒を防ぐ腸肋筋と殿筋の遠心性活動は、坐位で前下方にゆっくり前屈することで賦活することができる(図中)。

 

後方への傾斜に対する平衡反応や姿勢制御に必要な胸郭前面筋、腹直筋、腹斜筋、ならびに腸骨筋の遠心性活動は、図右のような器具を用いることで賦活できる。

 

これらは、「BOS固定での重心移動課題における平衡反応」に必要な筋活動でもあり、姿勢保持における重心動揺の減少だけでなく、安定限界の拡大にもつながる。

内腹斜筋横行下部線維は、同側の下肢や坐骨の荷重時における骨盤帯の安定に働く重要な筋です。
プラットフォーム上で10インチ程のフィットネスボールに座り、軽く弾むことで内腹斜筋横行下部線維の活動を高めることができます(図左)。

 

また、トランポリンで、弾まないように、かつ鉛直姿勢を保ったまま、ゆっくり軽く屈伸運動をすることで、立位荷重支持における内腹斜筋横行下部線維の活動に加え、殿筋と大腿四頭筋の遠心性制御による股関節・膝関節経度屈曲位での支持性を高めるとともに、姿勢アライメントを鉛直位に制御する練習ができるため、有用です(図中)。


トランポリンでの屈伸運動は手すりを使用しても可能であるが、さらに負荷を軽減する方法としては、壁に背中を当てたままゆっくり屈伸運動することでも、これらの筋活動の賦活と姿勢制御練習が可能です(図右)。

■Tilt Tableを使おう!
急性期治療後の患者など、長期臥床により坐位や立位などの抗重力姿勢保持能力が低下している場合は、上述のように個々の筋活動を賦活するよりも、抗重力姿勢保持に関わる筋の活動を全般的に賦活したいですよね。


でも、崩れた姿勢のまま姿勢保持練習を行っても抗重力姿勢保持筋に対する適切な負荷刺激にはなりません。


Tilt Tableは姿勢を崩すことなく荷重負荷を与え、すなわち立位姿勢保持筋に対し段階的に抗重力姿勢保持負荷を与えることができる(患者画像のため、詳細は電子書籍でご確認ください)。

Tilt Tableを設置している施設では、ぜひ活用されたい。

詳細はテキスト【再考 標準的理学療法】で!