今回のテーマは、『関節運動技術を身につけよ!』です。
患者のCさんは、脛腓骨骨折保存療法(長下肢ギプス固定)後で、膝と足関節のROM訓練を開始する際に、Fくんと私が一緒に施術しました。
まず、Fくんが膝関節の屈曲可動域を測定すると、80°で、その際、大腿前面遠位部に痛みの訴えと、筋性と思われる張力を感たそうです。
そして、Fくんは治療として、膝屈曲による大腿四頭筋のストレッチを行いましたが、痛みが強く、筋の張力や可動域の改善は得られませんでした。
次に、私が測定すると、85°で、同部に痛みの訴えはありましたが、軟部組織の張力は感じませんでした。また、痛みを訴えた部位を触診すると、伸張性の低下を感じました。
そして、私は治療として、大腿前面筋の伸張性低下を認めた部位を母指にて圧迫しながら、膝関節運動中間域で等速性関節運動を反復しました。
すると、可動域は100°まで改善し、そこで大腿前面遠位部に痛みの訴えと筋性の張力を感じました。
以下、フィードバックです。
私 『今日、Cさんの治療いっしょにやってみて、どうだった?』
F 『痛みが強くて、難しかったです。』
私 『何の痛みだと思った?』
F 『筋の張力も感じたので、伸張痛だと思いました。』
私 『それで、ストレッチしたんだね?』
F 『はい。』
私 『ストレッチしてみて、どうだった?』
F 『すごく痛がってて、あんまり効果なかったです。』
私 『僕がやってるの見て、何かわかった?』
F 『可動域が改善してました。』
私 『うん。僕が何をやったか覚えてる?』
F 『等速性関節運動ですか?』
私 『そうそう。
実は僕が可動域を測定したときは、筋性の制限を感じなかったんだよね。
痛みだけ。つまり、end feel empty(空)ってやつ。
ということは、あの痛みは、どういう風に解釈できるかな?』
F 『えっと、ギプス固定による廃用性の疼痛過敏、ですか?』
私 『おっ!よく知ってたね。
じゃあ、その場合には、どんな治療が効果的だと思う?』
F 『廃用が原因なんで、運動などの刺激入力です。』
私 『そのとおり。
だから、痛みを伴うストレッチじゃなくて、痛みのない範囲での反覆運動をしたってこと。
あそこに圧迫をかけてたのは、ついでに可動域もできるだけ広げるために、機能的マッサージをやってたんだけどね。
で、治療後は、運動中間域での痛みはなくなって、運動最終域で筋の張力とともに痛みが出た。
それは、廃用で短縮した筋の伸張痛と解釈できるよね。
まぁ、ギプス固定後の初回ROMなら、そこまでやったら十分かなと。』
F 『なるほど。』
私 『で、今日の本題はココからなんだけどね。
なんで、最初に、君が測定したときと、僕が測定したときでは、可動域も end feelも違ったのか。』
F 『…そうですね。』
私 『検査結果が違うから、評価も違うし、治療プログラムも違うから、治療効果も違うんだよね?』
F 『…そうです。』
私 『そう。関節運動技術をちゃんと身につけないといけないんだよね。
関節運動技術とは、関節構成運動を正しく出すということ。
それは、関節可動域測定にも、関節可動域訓練にも、MMTにも、徒手でやる筋トレにも共通する。
しばらくは、業務量を調整してあげるから、ちゃんと練習しておいてね。』
F 『はい。がんばります!』
はい、今日のフィードバックはここまでです。
次回のテーマは、『問題点を見逃すな!これがメタ認知!?』です。
乞ご期待!